秋田・青森旅行記改め、津軽。【六 酸ヶ湯温泉】
酸ヶ湯温泉へは、行きと同じルートを引き返すだけのバスに乗っていく。行きでも酸ヶ湯温泉を通過した時に初めて知ったのだが、酸ヶ湯温泉には酸ヶ湯温泉しかない。つまり、箱根温泉や有馬温泉には温泉宿がいくつもあるのだが、酸ヶ湯温泉にはその建物しかなく、その代わりに周囲に蔦温泉、猿倉温泉、谷内温泉など複数の温泉が点在しているのである。バスは我々がウォーキングした奥入瀬渓流もすいすいと下っていく。その様に、あれだけ時間と体力をかけて歩いたのは一体何だったのだという思いが浮かんでこなかったでもない。起点の石ヶ戸まで本当に一瞬で戻り着いた。
更にバスはカーブの多い山道を進み、体力消耗と相まって改めて気分が悪くなった自分は、酸ヶ湯温泉に到着した15:30頃には既に脳細胞が1/3ほど死滅しているような感覚に陥っていた。思い返せば、バスに乗った直後、運転席のすぐ2列後ろに乗車して、なぜかOから「ここに座るのでいいのか」と問われたときに「どうせすぐ降りるでしょ」と事実に反する回答をしていたことからも、相当判断力が低下していたことが伺える。消耗と車酔いに加えて更に自分の判断能力を衰えさせたのは予習不足からくる想定外の事実、「混浴」である。見せて困るものは特にないのだが、やはり想定外には弱い質であることを露見させてしまった。更には次のバスの時間を気にするOの素早い動きに付いていくので精一杯になり、最終的にOがコインロッカーを使用したにもかかわらず、なぜか自分は鍵なしロッカーに全荷物を強引に突っ込んで、かの有名な千人風呂へと急いで入浴した。八甲田山の雪中行軍で飢えと寒さに苦しむ兵隊が川に飛び込むがごとくである。
施設に到着して初めて知った「混浴」という事実にも大いに圧倒されたが、千人風呂の入り口を開けて見渡した、青森ヒバ造りで柱のない大きな建造物にも同じように圧倒された。また、強烈な温泉臭も経験したことがないほどの臭さで、これにも圧倒された。酸ヶ湯温泉の圧倒度はある意味この旅で一番である。
洗い場はないため、かけ湯(「冷の湯」と言うが、普通のお湯である)をした後、四部六部の湯、熱湯と2つある浴槽それぞれに入浴した。前者はおよそ42度、後者はおよそ40度といった感覚だったが、あっという間にのぼせてしまったとともに、今更になってコインロッカーを使わなかったことに焦りを感じ始めていた。自分の荷物は金銭にクレジットカード、レンタルしたガーミンにスマホと、貴重品まみれだったのである。自分はそれらが気が気でなくなり、のぼせと相まって早く出たくなったのだが、雰囲気が気に入ったOはもう少しいたいと言う。のぼせは冷水(体の中央部に掛けると元気が出ます、との案内付き。中央部とは何ぞや)を体にかけたり湯滝に打たれたりしているうちに多少収まってきたが、貴重品への心配はそれではまるで収まらない。自分がスリだったらどういう行動を起こすかと考えて、盗られる可能性はそれほど大きくはないなどとシミュレーションしながらでは、折角の千人風呂体験も半減である。四部六部の湯、熱湯、冷水、湯滝を行ったり来たりしながらOの出るタイミングをここぞとばかりに捉えて共に上がった。真っ先に上記貴重品を全て確認し、何も盗られていないことを確認して甚く安心した。「実を言うと入っている間これらが気になって仕方がなかった」とOに伝えると「おまえらしいな」との返事が返ってきた。誉め言葉なのか何なのか意図はよく分からなかったし「らしい」のかもよく分からなかったのだが、とにかく何も盗られていないことに安心するとともに、消耗が激しいと適切な選択・判断ができないため、「旅行とは選択と判断の連続である」の定理に則ると、いかに消耗を抑えて旅行するかは重要な鍵になるように思われた。自分のような小心者であれば尚更である。
続いて同じ酸ヶ湯温泉内の玉の湯に移動した。ここは男女別に分かれており、洗い場もついている。源泉は千人風呂と異なるそうだが、泉質は酷似しており、ここでも強烈な温泉臭を体験した。体を洗い、湯舟に浸かり、Oより先に上がったのだが、自分の行動が余りに遅く、Oの倍以上の時間をかけて着衣と片づけを済ませた。そのために若干心配と迷惑をかけたようであったが、そこに気を払うだけの脳内処理能力は最早持ち合わせていなかった。繰り返すようだが、何せ脳細胞の1/3が死滅していたのである。そのため、水汲み場があるにもかかわらず150円でペットボトル入りの水を買うなど、吝嗇を旨とする自分にはあるまじき行為まで犯してしまった。ともあれ、帰りのバスには間に合って用事を済ませ、時間も少しあったので「あと2人、入れます。(998名様入浴中)」と書かれたパネルから顔を出したOと自分の写真を店員さんに撮ってもらった。旅もここまでくると写真依頼も手慣れたものである。
酸ヶ湯温泉へは、行きと同じルートを引き返すだけのバスに乗っていく。行きでも酸ヶ湯温泉を通過した時に初めて知ったのだが、酸ヶ湯温泉には酸ヶ湯温泉しかない。つまり、箱根温泉や有馬温泉には温泉宿がいくつもあるのだが、酸ヶ湯温泉にはその建物しかなく、その代わりに周囲に蔦温泉、猿倉温泉、谷内温泉など複数の温泉が点在しているのである。バスは我々がウォーキングした奥入瀬渓流もすいすいと下っていく。その様に、あれだけ時間と体力をかけて歩いたのは一体何だったのだという思いが浮かんでこなかったでもない。起点の石ヶ戸まで本当に一瞬で戻り着いた。
更にバスはカーブの多い山道を進み、体力消耗と相まって改めて気分が悪くなった自分は、酸ヶ湯温泉に到着した15:30頃には既に脳細胞が1/3ほど死滅しているような感覚に陥っていた。思い返せば、バスに乗った直後、運転席のすぐ2列後ろに乗車して、なぜかOから「ここに座るのでいいのか」と問われたときに「どうせすぐ降りるでしょ」と事実に反する回答をしていたことからも、相当判断力が低下していたことが伺える。消耗と車酔いに加えて更に自分の判断能力を衰えさせたのは予習不足からくる想定外の事実、「混浴」である。見せて困るものは特にないのだが、やはり想定外には弱い質であることを露見させてしまった。更には次のバスの時間を気にするOの素早い動きに付いていくので精一杯になり、最終的にOがコインロッカーを使用したにもかかわらず、なぜか自分は鍵なしロッカーに全荷物を強引に突っ込んで、かの有名な千人風呂へと急いで入浴した。八甲田山の雪中行軍で飢えと寒さに苦しむ兵隊が川に飛び込むがごとくである。
施設に到着して初めて知った「混浴」という事実にも大いに圧倒されたが、千人風呂の入り口を開けて見渡した、青森ヒバ造りで柱のない大きな建造物にも同じように圧倒された。また、強烈な温泉臭も経験したことがないほどの臭さで、これにも圧倒された。酸ヶ湯温泉の圧倒度はある意味この旅で一番である。
洗い場はないため、かけ湯(「冷の湯」と言うが、普通のお湯である)をした後、四部六部の湯、熱湯と2つある浴槽それぞれに入浴した。前者はおよそ42度、後者はおよそ40度といった感覚だったが、あっという間にのぼせてしまったとともに、今更になってコインロッカーを使わなかったことに焦りを感じ始めていた。自分の荷物は金銭にクレジットカード、レンタルしたガーミンにスマホと、貴重品まみれだったのである。自分はそれらが気が気でなくなり、のぼせと相まって早く出たくなったのだが、雰囲気が気に入ったOはもう少しいたいと言う。のぼせは冷水(体の中央部に掛けると元気が出ます、との案内付き。中央部とは何ぞや)を体にかけたり湯滝に打たれたりしているうちに多少収まってきたが、貴重品への心配はそれではまるで収まらない。自分がスリだったらどういう行動を起こすかと考えて、盗られる可能性はそれほど大きくはないなどとシミュレーションしながらでは、折角の千人風呂体験も半減である。四部六部の湯、熱湯、冷水、湯滝を行ったり来たりしながらOの出るタイミングをここぞとばかりに捉えて共に上がった。真っ先に上記貴重品を全て確認し、何も盗られていないことを確認して甚く安心した。「実を言うと入っている間これらが気になって仕方がなかった」とOに伝えると「おまえらしいな」との返事が返ってきた。誉め言葉なのか何なのか意図はよく分からなかったし「らしい」のかもよく分からなかったのだが、とにかく何も盗られていないことに安心するとともに、消耗が激しいと適切な選択・判断ができないため、「旅行とは選択と判断の連続である」の定理に則ると、いかに消耗を抑えて旅行するかは重要な鍵になるように思われた。自分のような小心者であれば尚更である。
続いて同じ酸ヶ湯温泉内の玉の湯に移動した。ここは男女別に分かれており、洗い場もついている。源泉は千人風呂と異なるそうだが、泉質は酷似しており、ここでも強烈な温泉臭を体験した。体を洗い、湯舟に浸かり、Oより先に上がったのだが、自分の行動が余りに遅く、Oの倍以上の時間をかけて着衣と片づけを済ませた。そのために若干心配と迷惑をかけたようであったが、そこに気を払うだけの脳内処理能力は最早持ち合わせていなかった。繰り返すようだが、何せ脳細胞の1/3が死滅していたのである。そのため、水汲み場があるにもかかわらず150円でペットボトル入りの水を買うなど、吝嗇を旨とする自分にはあるまじき行為まで犯してしまった。ともあれ、帰りのバスには間に合って用事を済ませ、時間も少しあったので「あと2人、入れます。(998名様入浴中)」と書かれたパネルから顔を出したOと自分の写真を店員さんに撮ってもらった。旅もここまでくると写真依頼も手慣れたものである。
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