2021.11⑤

2022年1月16日 日常
秋田・青森旅行記改め、津軽。【四 青森】

 かくして「捨てる神あれば拾う神あり」を文字通り体験した我々は、十二湖駅に入線してきたリゾートしらかみ「青池」号に乗車した。次のウェスパ椿山駅にも一瞬だけ停車したが、残念ながらスタンプラリーのプロを発見できなかったため、この駅でのスタンプは断念した。一方でその次の深浦駅では十分な停車時間を与えられ、駅のスタンプとともに列車最前列の「青池」号のスタンプも確保した。深浦の海岸はまたも日本海らしい猛々しい岩々に縁どられた水平線に沈む夕日で有名であり、列車もその時刻に合わせて同地点を通過しているかのようだった。この時点でまだ16時半頃という早さであったが、夕日はわずかな光芒を残して沈み切っており、オレンジと紫の入り混じった曇り空の演出と相成った。深浦駅ではリゾートしらかみの残る1タイプ「橅」号との単線すれ違いのための待ち合わせも行われた。プロと行動を共にしていれば走ってスタンプを押しに行くところだったかもしれないが、素人のみでの行動は危険と判断し、「青池」号に待機した。「くまげら」号にも「青池」号にもなかった「橅」号の販売専用車両を車窓から羨ましがりながら眺めていると、五所川原特産だったか、「ドライメロン」の社内販売が通りがかったため、Oによって「メロンに目がない」という設定に急遽変更された自分は躊躇わず1袋500円で購入した。一口食べるとあまり味がせず、失敗の匂いも感じたのだが、噛めば噛むほど甘みが出てきて、まずまず及第点といった感想を抱いた。なお、袋をよく見ると「メロンチップ」と書いてあり、それであればこの風味も頷けると思った。気付けば隣のホームに停車していた「橅」号は先に発車しており、スタンプ目当てに乗り込んでいたら危うく再び十二湖に戻されるところだったかもしれない。
 深浦駅を発車し、一方でメロンチップに夢中になりながら、もう一方では『津軽』の世界観に浸っていると、気付けば窓外は真っ暗になっており、否応なく本に没頭するほかなくなった。Oは「明るい時間帯であれば津軽富士と呼ばれる岩木山も見られただろうに」と残念がっていた。自分は『津軽』にも出てくるその山の存在もまだ明確に認識していなかったが、残念なことには変わりはなく、一方で明日のバスでも見られるかもしれないと気を取り直し、『津軽』に戻っていった。
 続いて途中下車した千畳敷や五所川原など『津軽』でも言及される景勝地や町にも止まりながら、終点の青森駅には19:38に到着した。『津軽』によれば、青森は太宰が中学時代を過ごした街である。当時の青森中学は今の青森高校の前身であるが、場所は移転してしまっているらしい。駅前の大通りには有名チェーンが一通り揃っているものの、時間帯の割には閑散としており、地方都市の夜の早さを感じさせられた。これはこの地に住むとなると暗澹たる気分だろうと思いながら、疲労感を湛えた身体を大通りに沿って押し進め、一本入った路地を経由してホテルSに到着した。
 部屋に着くなり自分が用を足している間、Oは仕事力を発揮して次々と近辺のすし屋に空席の有無とラストオーダーを電話で確認していた。ホテルSまでの道中、夕食をどうするかという話になり、サウナ併設のレストランにするか、地元のすし屋にするかの2択になったのだが、せっかく本州の奥地まではるばるやってきたのだから、そこでしか食べられないものを食べることを優先しようということになったのだった。Dというすし屋では両腕に刺青の入った青年が接客してくれた。まずは「おまかせ」の次に高価格な「特上」を2人前と、刺青に似合わず爽やかな好青年の勧めを踏まえた地酒一合、その他おかずを少々注文した。自分にとって飲酒はおよそ半年ぶりであり、そのときもワインだったため、日本酒に至っては最後に飲んだのかいつなのか判然としない。久々に飲んだ辛口の日本酒に酔いしれながら、普段あまり得意としない貝類の寿司にさえ舌鼓を打った。食後はサウナに行く予定だったため飲み過ぎには用心せねばと半ばびくびくする自分に対し、Oは「酔いはサウナで飛ばす」と豪快な一言をかましていた中、さすがに一合を二人で分けるのは少なすぎ、地酒飲み比べセット(三つ合計で約二合)を追加で注文した。このときも刺青青年の勧めを踏まえて三種類選択した。自分には酒のこだわりがないため、辛口好きのOが基本的に主導権を握った。
 丁度良い具合に酔った我々は、口コミのよさを大前提として、近さを最優先して決めたサウナにそのまま徒歩で移動した。サウナは1セットにつきサウナ、水風呂、休憩の順で行うのだが、Oと自分がサウナに行くときには3セット行うのが通例だ。この日も例に漏れず3セット行ったが、1セット目が一番よく効いたように思う。休憩は初めて浴室内ではなく外気浴で行ったが、水風呂を短めにし、身体をよく拭いてからであればそこまで寒さを感じず、アルコールも手伝ってか意識と無意識、もとい過去の良き思い出からの捏造と無意識との間をたゆたい、無上の時間を過ごすことができた。もはや現実の家庭生活はクソである。3セット目には外気浴もいい加減寒さを感じるようになってしまったため、改めて身体を露天風呂で温めてから少々浴室内で追加休憩の上、ホテルSへと帰還した。Oは早々に就寝したが、自分は毎週見ているドラマ『二月の勝者』のうち、サウナで見た箇所以外を20分ほど視聴した後眠りに落ちた。

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