時折何の前触れもなく、ある音がよく聴こえてくるということがある。
その音は何もいわゆる「音楽」に限ったものではない。
自然のものから人工のもの、人の話し声から動物の鳴き声まで、
鼓膜を通して脳(果たしてこれを即ち「精神」と言い換えていいものだろうか)に何らかの刺激を与えるという意味での「音」である。
しかもその音が永続的によく聴こえてくることは滅多になく、
むしろ大抵の場合は、かりそめのものとして通り過ぎていくのだ―あたかも街で見知らぬ人と瞬間的に交す視線のごとく、あたかも夏のゆふだちのごとく―

これはひとつの邂逅である。

きっかけなどない。そもそも「きっかけ」などというものがない。
6が出たら次は6が出ないのだろうか。
それは外界から断絶されていると見なしてしまっているところの、ある働きによるものに他ならない。
しかしそれを「きっかけ」と一般的に称するのであるから、
それはきっかけなのである。
つまり、この種の概念形成に疑いを挟まないわけではないが、
真っ向から否定してしまうつもりは毛頭ない。

さて、音がよく聴こえてくるという話がある。
これと平行なものとして、(もっともこちらはきっかけを感じることがほとんどなのだが)突如として頭脳が明晰になったように錯覚することがある。

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や

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