手紙

2006年5月4日 日常
 
 
「お久しぶりです。お元気ですか。
僕はあの日以来すっかり時がとまってしまいました。
これは何もメタファーなどではありません。
僕の中でほんとうに時がとまってしまったのです。
確かにお日様が東から昇って西に沈み、周りが静かになるという一連の動きが行われてはいるのですが、僕自身が全く外へ出ていませんし、日めくりもあの日のままです。
それにもう慣れてしまったのか、それとも薬の所為か、いや、どちらかに決めることも無いでしょう、とにかく僕はあまり寝ずに過ごすようになってしまいました。それもまたあの日以来徐々に為されてきたことです。
常に起きながらにして寝ており、寝ながらにして起きているわけです。
だから尚更時はとまってしまっています。
時がとまってしまっているのですからあの日の記憶は他の誰のものよりも鮮明です。
当然あなたのものよりも。
みんなの時は、あなたの時は、どんどんどんどん先に進んでいるのでしょうが、僕の時はあの日からまるで進んでいない。
進んでくれなくなってしまったというか、無意識に進められなくなったというか。
ですからあの日は今でも僕のすぐそばに居てくれます。
そして僕はあなたの過去を生きているのです。
それはそれは素晴らしいものです。
毎日がその日のままなのですから。
そして僕はいつまでも若々しい!

最後に、突然のお手紙であなたは驚かれたかも知れません。
どういうわけか無謀にも僕はあなたにほんの少しだけ近況を伝えたくなったのです。
それからさっきも言った通り、僕は常に睡眠と覚醒のはざ間に生活しているので、本当のところこれが現実であるという確たる自信がありません。
それで現実を確認するためにこの手紙を書いているような気もします。
あと、返事は必要ありません。
あの日が鮮明でいてくれるのはあの日と今の間に何も無いからであって、返事が来るとそれが変わってしまうかもしれない。
そういった意味で僕がこの手紙を書くことは無謀といえるのです。
それでもなお手紙を書こうとしたわけは僕にもよく分かりません。
こんな一方通行はあなたにとって迷惑でしょうから、言うまでもなく、読むにせよ読まないにせよさっさと捨ててしまってください。
その方が僕にも喜ばしい。
最後が何だか支離滅裂ですね。いつものことです。
それではさようなら。
あの日の精神が永遠であることを陰ながら祈っています。」

(例えば、メモ帳を常時携帯していても思いついたことを書き留めるのが億劫な)

ladies and gentlemen

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